回遊型演劇、体験型演劇(イマーシブシアター)知ってますか?

物語の中に入ってしまいたい!

没入型鑑賞体験のすすめ。


今回は、ようやっとと言う感じですが、私の一番の興味関心分野であるパフォーミングアーツについて書こうかなと思います。

というのも、昨日まちづくりのトークイベントで、街で回遊型の演劇をやった話など聞いたからなんですが、なかなか一棟丸ごと会場を貸し切ったり、道路局に許可申請をして街で演劇をやるなんで気概のある制作さんが必要なこの形態。

大変なのは重々承知だけれど、もっと日本に面白い取り組みが増えないかなーと思ったので、私が知っている面白い企画をメモしておこうかと。

回遊型演劇、または、体験型演劇、イマーシブシアターって聞いたことありますか?


上のブログでは、回遊型演劇について考察も含め、うまくまとめられているため一読の価値ありです。それによると、回遊型演劇とは、

「決まった観客席が設定されていない演劇の上演形式」

とのこと。


今まで、演劇やダンスを見ると言えば、ヨーロッパの歴史の中で発達したシアター形式で、舞台と観客席が分断されており、客席は舞台に向かってお行儀よく座っているという形態が大半を占めています。元は、古代ギリシャのコロッセウムの広場とかから発達したらしいですけどね。

劇場の形態の歴史などについては早稲田の演劇博物館(エンパク)が詳しく展示されてますよ。

http://www.waseda.jp/enpaku/


だから、観客席との間の一面を「第四の壁」(それ以外の舞台の三方は幕で囲まれているため)と言って、どうやって第四の壁を突破するか(観客を巻き込むか)とかが議論になったりするんですが、そもそも回遊型演劇は第四の壁がないわけなんですよね………

これだけでもすごい……




そもそもは、ニューヨークの Sleep No More

おそらく私が知っている中でも、ある程度有名で規模の大きい初めての回遊型演劇はSleep No Moreかと思っています。

私、一人でニューヨークに遊学しに行ったのに見損ねていますので、ニューヨークにこれから行く方はぜひ!このブログがとてもわかりやすいです。

一棟、廃墟のビルを貸し切って、観客は仮面をつけて透明人間になりきり、マクベスの無言劇を主軸にした演技・演者を追いかけながら観劇するというもの。オフブロードウェイ作品ですね。

なんでもビルを3時間に渡ってうろうろするので、すごい疲れるとか笑



ここで私的に一番触れておきたいのが、ダンスで初めてこの形式を取り入れたDazzle(ダズル)のTouch the Darkという公演が2017年にありました。

↓公式ホームページ

「Touch the Dark」は建物一棟全てを舞台とする作品です。 観客は作品世界の一部として、時にダンサーに導かれ、時に自分の意志で建物内を自由に移動しながら、様々な場所で繰り広げられるパフォーマンスを五感で「体感」する体験型作品です。 一回の公演につき観客数を最大55人に限定することで、濃厚かつ贅沢な体験を可能にしました。 さらに各回5名分だけ用意された「プレミアムチケット」を購入された方々は、劇中で他の観客とは違う場所へ導かれ、その方々だけの特別な体験をして頂きます。 従来の公演の固定化された視点から解き放たれ、DAZZLEが紡ぎ出す幻想的なダンスと身体表現に触れていく中で、この奇妙な物語の闇が少しずつ解き明かされていきます。 その病院は、 おかしなところが何もなかった。 入っていった者より、 出て来た者の数が少ない? 病院は人生の終着駅になることもある。 患者の死に抗う、誠実な院長がいた。 あらゆる治療を施し、 命を守るためには手段を選ばなかった。 必ず助ける。 仮に肉体が温もりを失ったとしても、 彼は決してあきらめなかった。 まだ、救う方法があるはずだ。 彼女が目を覚ますための、方法が。 このように、この病院には、 おかしなところは何もない。 さあ、安心して、ご来院を。 「360」のVR映像はyoutubeアプリ→VRモードにしてからご覧ください。 通常のブラウザや携帯電話からただリンクに飛ぶと、 360VR機能ではご覧頂けません。 <終了しています><終了しています>客演メンバーキャスト交代制の役柄もあり、回によって出演しない場合があります。ご了承下さい。 終演後の販売となります。 特定商取引法に基づく表記 Photography supplied courtesy of Takahiro Iino, Copyright ©2018 DAZZLE, All rights reserved.

www.touchthedark.jp

飯塚さんが、下記のニュース記事でも仰ってますが、「Sleep No Moreを超えられると思った」と、ニューヨークの体験がきっかけになっていることを触れておられます。

Dazzleの公演は病院の廃墟で行われ、ストーリーや、構造に重点が置かれている作品となっていましたが、それはもう物語の一部になったような体験で新感覚でした。

ダンスでやっちゃうというのが本当にすごい…。



まちづくり、パブリックを活かした回遊型演劇

これは2008年に、横浜吉田町で急な坂スタジオの主催で行われた「ラ・マレア 横浜」という、マリアーノ・ペンソッティ(劇作家・演出家)の回遊型演劇作品です。

なんでも、店舗の窓辺とか路上をジャックして9つの短編シーンを全て9回上演し、観客はそれを回るという形式(許可取り大変だっただろうなぁ(制作者の目))。


夜更け_路上に浮かび上がるパフォーマンス 


アルゼンチンのアーティスト、マリアーノ・ペンソッティの脚本・演出による、通り全体を会場とした街頭パフォーマンス。9つのショートストーリーが店舗内や路上に散りばめられ、観客は自由に次のストーリーへと足を進めることができます。作品を観にきた人、街に住む人、街で働く人、通りすがりの人・・・。様々な人が同じ瞬間に同じ場所で出会い、またどこかそれぞれの場所へと向かっていきます。あなたは誰と通りを歩き、どのような物語を紡ぎますか?

なので観客によって、おのずと見た順番によって違うストーリーになるわけですね。

そこに暮らすように演者がいるってすごくゾクゾクしませんか。地続きにストーリーがあって覗き見しているような。



回遊型の映画もあります

あまりパフォーミングアーツの人には触れられることはないのですが、2014年に吉祥寺の爆音映画祭でボランティアスタッフをしていたこともあり(あの頃は毎日明け方まで爆音調整していて吉祥寺に暮らす不思議な日々でした)、この作品を知りました。


瀬田なつき監督の「5windows」


5つの短編映画を屋外上演し、観客はスクリーンを探して見て回るというもの。

もともと街で起こった物語が映画になっているため、街に溶け込むように上演される体験は当時とてもインパクトのあるものでした。

近年、恵比寿でも上映されていて写真なども豊富なので、様子を知りたい方は下記リンクへどうぞ。

鉄道を使った謎解きゲームとかも、広い意味でいう回遊型エンタメかもしれませんね、、、

ふと思っただけですが。


爆音映画祭を主催されてるboidの樋口さんは、5windowsのフィルムをお持ちのようですので、ぜひ興味があるイベント屋さんは5windowsをまたどこかで実現してほしいです!

DISTRIBUTION | boid.net

下記作品は現在上映可能です。上映に関する問い合わせはboidまで。 宮崎大祐 『大和(カリフォルニア)』 公開日 2018/4/7 上映素材 DCP、BD 詳しくはこちら ベリンダ・サリン 『DARK STAR/H・R・ギーガーの世界』 公開日 2017/9/2 上映素材 DCP、BD 詳しくはこちら ドン・ハーディー 『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』 公開日 2017/7/1 上映素材 DCP、BD 詳しくはこちら 瀬田なつき 『PARKS パークス』 公開日 2017/4/22 上映素材 DCP、BD 詳しくはこちら ニコラス・ローグ 『地球に落ちて来た男』 公開日 2016/7/16 上映素材 DCP、BD 詳しくはこちら フランシス・コッポラ 『地獄の黙示録 劇場公開版<デジタル・リマスター>』 公開日 2016/4/16 上映素材 DCP 詳しくはこちら サミュエル・フラー 『チャイナ・ゲイト』 公開日 2016/2/20 上映素材 BD 詳しくはこちら サミュエル・フラー 『ショック集団』 公開日 2016/2/20 上映素材 BD 詳しくはこちら サミュエル・フラー 『裸のキッス』 公開日 2016/2/20 上映素材 BD 詳しくはこちら ジョナサン・デミ 『STOP MAKING SENSE』 公開日 2015/9/1 上映素材 BD モンテ・ヘルマン 『コックファイター』 公開日 2013/1/19 上映素材 35mm 詳しくはこちら ロバート・アルドリッチ 『合衆国最期の日』 公開日 2012/11/3 上映素材 BD 詳しくはこちら 杉田協士 『ひとつの歌』 公開日 2012/10/13 上映素材 BD 詳しくはこちら モンテ・ヘルマン 『果てなき路』 公開日 2012/1/14 上映素材 BD 瀬田なつき 『5 windows』 公開日 2011/10/1 上映素材 BD 詳しくはこちら 瀬田なつき 『5 windows mountain mouth』 上映素材 BD 詳しくはこちら 瀬田なつき 『あとのまつり』 上映素材 BD 詳しくはこちら 安井豊作 『Rocks

boid.net


私だから書ける記事ってこういうところかなぁと探り探りで書いています。

何か、後学のためにもなったらいいな。ヨハクで回遊型作品を作ることはまず当面ないと思いますが、高い構成力が問われるこの形態、もっと流行ったらいいなと思っています。

唯、凛として。

生きる為の小さなこだわり。 そして私の生きる根源になっている、 コンテンポラリーアート/ダンス、ヨコハマの街について、 此処に手持ちのノートのように記していきたい。

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