"企画メシ"勝手にスピンオフ企画 01 /漫画編集者の企画

単体で人の心を動かすパワーを持った漫画に対し、企画屋ができることってあるのでしょうか。企画メシ勝手にスピンオフ企画第一弾は、「漫画編集者」の方に話を聞いてみました。

なんとご好意で、販促企画案まで持ってきて頂きました!必見!

前提:これは「企画メシ」というゼミの課題を考えるにあたり、現場の人にインタビューしようというスピンオフ企画です。情報は足で稼げ!



「企画メシ」とは隔週で、最前線の現場で走り続ける講師の方たちに、お話を聞く+あらかじめ出してもらった課題に対する企画書にコメントを入れてもらう他業種の人が集まるゼミのようなところ。

企画メシについてそもそも(第一回目)の話はこちら▼

https://kilarlin.theblog.me/posts/4284824





今回の課題:漫画編集者 畑中雅美さん

漫画「虹、甘えてよ。」の宣伝プランを考えてください。予算は度外視で良いです。



というような課題を抱えつつ、今回はYさんにお話を伺いました!


ゲスト:漫画編集者のYさん

新卒から漫画編集部に入り、社会人4年目の漫画編集者。最近、波に乗ってきているらしい。好きな漫画はあひるの空。

インタビュアー:きらら

社会人4年目のアートイベントプランナー。初めてのめり込んだ漫画はCCさくら。最近クリアカード編が発売されまんまと戦略にはまり買い求めている。



そもそも編集者って販促企画するの?

ーーというわけで、漫画を売る企画の相談に乗って欲しいんですが、そもそも編集が販促企画みたいなの考える事ってあるんですか?

やるやる一番やる。やらない人もいるけども、基本的に漫画好きなのって編集だけだから笑。編集と営業の仲悪くなりがち。

まぁでも、それはそうで、みんなが漫画好きで入社してるのに編集部は漫画出してるだけで、営業は担当作がないのに編集にもっと売れって言われるから仲悪い。だから編集が結局色々考えるんだけど。


ーー例えば、Yさんがやった企画とか、よくやる企画とかあります?

例えばだけどめちゃめちゃスタンダードのやつは、サイン色紙プレゼントとか、売れてる作品と一緒に買った人に応募者全員プレゼントとか、色々あるよ。

あとは、1巻無料とか過去作を5巻無料とかにするのをよくやるかな。


ーー過去作全部無料!? 採算取れるんですか!?

やるよ。『インベスターZ』とかこないだ11巻無料とかやってたし。でも結局そのあとの最新刊、お金を出して買っちゃうんだよね。それに、今は1巻はだいたいどこも無料だよ。


ーーやっぱ一巻って大事なんだ…。

1巻、1話は超!大事だよ!めちゃめちゃ大事。途中から読まないからね。


ーー確かに!本屋さんにも一話だけのミニブック結構必ず見ますもんね。

読者の反応ってやっぱり気にします? よくアンケートの結果で部数決まるっていうのは聞くけど……

ジャンプは完全にアンケートだけど、アンケート辞めてるとこも多いし、あんまり見なくなってきてると思う。基本的に今は雑誌買う人が少ないから、アンケートそんなに見ないで、単行本1巻出してみての売上で今後の方針を決めたり。


ーーじゃあ何見てるの? Twitter?

Twitterも、見てない見てない笑。出す前に書店員さんにアンケートとったりするけど、そういうので点数がどうなるかで見たりしてる。ゲラを配ってでこれどれくらい売れますかみたいな会話をしたり。


ーー書店員がマンガを読んで点数付けたりするんですね!

どこもやってると思う。


ーー好き嫌いにも寄るじゃん。

でも、書店員が好きじゃないと売れないから。並べてくれないし、注文もしてくれないもん。刷り部数って結局書店からどれだけきたかで決まるから。俺らが面白いと思っても書店が売ろうと思わないと売れない。


ーー書店員ってそんなに強かったのか……



企画の力で漫画って売れるの?

ーーちなみに、漫画って単独で面白いじゃないですか。企画でどこまで売りを伸ばせるもんなんでしょう。

主に企画で作品って動かないんだよ(売れないんだよ)。動くとしたらその企画でバズって、その作品の認知度が上がって、買ってもらうというのはあって。企画って要は、認知度を高めると同義でもいいかなと思う。

で、実は考えてきました。


ーーマジで!

過去売れてる作家は、間違えなくこれやったら絶対売れるなっていうのは、今までのキャラを今作にも出すっていうのがあると思う。青木先生の過去作の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『僕は妹に恋をする』とかの少女漫画だったら、キャラが高校生だから出しやすいと思うし。

100個とか企画が集まっても、販促企画じゃないけど、この企画に勝てるやつはたぶんない。青木先生の過去の部数で言ったらめちゃめちゃ話題になるだろうと思うし、実売もめっちゃ動くだろうなと思う。


ーー少女漫画だとCLAMP先生とかそれでファンを伸ばしてるイメージです。でもそれは作品の世界観にも関わることだし、編集から言えるものなですか?

編集がめっちゃガッツ出せば、なくはないと思う。でも関係性によるかな。

提案した時の表情によっては、「なんちゃってー!笑」って言うけどね笑。一回はガチで頼む。それで売れるのであれば。仕事だから。


(かっこいい……)


ーーなんかいい企画を聞いちゃったんですがそれをパクるわけにもいかず……。私も頑張って考えてみたいので、もうちょっと色々聞かせてください。


意外と知らない、漫画の買われ方の裏事情

ーー今回お題が少女漫画なんで、やっぱりターゲットは中高生なんですかね。

作家の名前で決まっちゃうことが多いよね。デビューからの今までの読者が、今大体40代だからみたいな。少女漫画でも結構年齢層が上っていうのもある。

ちなみに40代が一番漫画買うんだよ。40代女性が一番漫画買う。40代女性が食いつくやつは、売れるみたいな感じ。


ーー男性はどうですか? 漫画全体だと男性の方が多く読むイメージがあるけど……

売れてるやつは男が買っていて、女の方が継続率が高い。

男性は一巻で辞めちゃう人が多かったりするんだけど、女性は1回買ったら結構続けて買ってくれる。でも爆発力があるのは男だったり。


ーー女の子の方が一途で男は浮気ばかりということか……

ちなみに、少女漫画の特徴って考えると巻数いかないというのもあるかも。続いても20巻とか。ワンピースは80巻とかいくけど。

少女漫画って大体付き合ったら終わりだから、大体10巻くらいだし。

買われ方という意味では、最近よく言われるのが、「作家買い」がなくなってるっていうこと。

「この人の作品だったら買うよ!」っていうのが、「作家買い」って言うんだけど、前はあったのに今はなくなったって言われていて。

その理由として、好きなのは作家じゃなくて作品だから、このキャラ達が動いてなきゃないなら要らないよみたいな。


ーーなるほどーそういう意味でも、「前作のキャラを再登場させる」って企画は効くのかぁ

最近のトレンド、傾向みたいなのってあります?

出版の今年と今のトレンドが、昔の作品をもう1回やるっていうのをよくやっていて。『フルーツバスケット』とか、『カードキャプターさくら』とか、『シャーマンキング』とか、『るろうに剣心』とか。外れたのがまずないんだよね。


ーー読者層がまだ変わってないっていう感じがしますね。

そうそう、女の人はまだ買ってくれるし、新しい人はあんまり買ってくれないんで、試しに昔流行ったやつやったら全部が全部当たった。

あとちょっと前に、カイジの『トネガワ』っていうのが結構売れて、スピンオフも結構売れてる。今年の金田一少年の事件簿の犯人視点がめちゃめちゃ売れてるし、コナンもやってる。


ーーターゲットを結構大人に絞ってるし、かつての少年少女しか金を落とさないんだ……



最後に

ーー最後に、漫画の編集のお仕事に対する心がけ・思いを聞いて終わりにしたいと思います。

心がけとしては、編集は飽きちゃいけないっていうことをよく言われる。

読者は半年に一回しか読まないけど編集と漫画家は2日に一回漫画読んでるからもう分かんなくなっちゃう。

編集は200回刷られる前に読んでるから、一度しかやってない展開でも、もうこの展開飽きたわってなるんだよね。一番最初にウケたやつを、ずっと何十年も飽きずにやんなきゃいけないんだと。

でもめちゃめちゃ楽しいよ!

考えて欲しいんだけど、漫画っていう自分の中で一番好きなもので、一番好きな作家が一番好きなものを描いてくれるわけよ。編集って基本的に、めちゃくちゃ好きな漫画家にマンガ描いてくださいって声掛けて、会いましょうってなって、漫画家が出してくれた中でもこれじゃなくてもう一回読みたいのはこういう部分なんですよって言って描いてもらうって最&高よ!!!




普段は喋り方も冷静なYさんが、畳み掛けるごとく一息で漫画編集者の楽しさを語ってくれて。「忙しくて大変で……」みたいなことを1mmでも予想していた私はめちゃめちゃ恥ずかしくなりました。

読者は漫画という娯楽に対して期待して買うから、無理に企画でごり押ししても作品が良くないと口コミは広がらず実売は動かない。作品自体にも作用しつつ、その売り方、届け方にまでこだわって、本当に漫画に愛される企画屋さんが編集者なのかと。

元ネット広告代理店にいた身としては、コンテンツは基本的に変えられないものだったし、今私がやっているアートイベントプランナーは、売れるというような明確な指針がなかったりする。編集者の「世の中の流れを客観的に捉えて、担当作との橋渡しをウチからソトから色々な手を使って部数が伸びるよう考える」その姿を新鮮に感じ、思考に蓋を少しでもしたらいけないなと感じました。


なにそれ、めっちゃ楽しそうじゃん そりゃ天職じゃん!!!

唯、凛として。

生きる為の小さなこだわり。 そして私の生きる根源になっている、 コンテンポラリーアート/ダンス、ヨコハマの街について、 此処に手持ちのノートのように記していきたい。

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